光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

寒煙

MINOLTA CLE / Elmar 5cm F3.5 (FP4 PLUS)

インド旅行記(30)

バラナシから夜行列車に乗り、コルカタについたのは翌日の昼頃のことだった。 コルカタの街はより高級店とスラムのあからさまな格差が今までに訪れた街以上に見える程度で、全体的に都会ではあったがあまりおもしろいところはなかった。例によってバックパッカーが集う通りがあり、そこではまた例によって何の目的かわからないが話しかけてくるパターンの奴がいたりと、勿論良い人もいたがもう終盤ではいつものことという程度にしか捉えられなかった。

この街の飯屋であった日本人の人(帰ってきてからもお会いした。だいたい似たようなことをやっている人は似たようなクラスタに属するのでなかなか趣味も合う好青年であった)のおすすめもありインド旅行最後の朝は寺院に行って宗教儀式を見学したのだが、その際にもどさくさにまぎれて金をせびってくるやつがいたのには流石に苦笑してしまった。ただ、狭い寺院の中すし詰めで赤い花を投げながらなにやら口々に詠唱する様子を見ると、やはりなんというか宗教らしいなんともいえない迫力と気迫のようなものが感じられた。そしてその流れでこの寺院で有名な生け贄の儀式を見学した。子ヤギの脚を縛り付けてナタで一気に首を生きたまま落とすのだ。比較的淡々とコトは進むものの、ヤギも脚を縛られたあたりで最期を悟ったように鳴き声が変わる。ネットの動画でこの程度のものであれば見たことはあるが、ナマで首と胴体が離れた後も少し声をだすヤギの顔を見るとなんとも言えない気持ちになる。それはもちろん、可哀想とか残酷とか、あるいはなんか簡単にスパッといくねぇとか、あるいは人間なんだから他の生物の命をいただいてですねだとか、肉はやっぱりラムっぽい色だったとか、そういう数十種類の感情が一挙に混ざった気持ち、だ。