光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

懐柔

MINOLTA CLE / Elmar 5cm F3.5 (FP4 PLUS)

インド旅行記(29)

バラナシからデリーにそのまま戻るつもりでいたのをせっかくだから一端バラナシからコルカタまで行って、そこから列車ではなく国内線飛行機でデリーまで戻る、というプランに変更したのは、旅の途中で会った人と話して、こんなところで中途半端にけちってもしょうがないと思ったからだ。そういう気まぐれなプラン変更こそ個人旅行のメリットである。 バラナシを出たのは予定より少し早めだった。正直2日間滞在していい加減街を歩くたびに話しかけられたり牛のウンコを避けたりといったことに精神的に疲弊してうんざりしていたというところがある。ただバラナシ2日目に宿替えしたところの主人は大変良い人で(おそらく『地球の歩き方』にまだ紹介されていないから)、また駅で会った上流階級の兄弟などや、その際夜行列車を乗り間違えかけたときに助けてくれた何人かの人たちと、良い人もとても多かった。個人個人と一定の集団として見たときの評価がまるで違うことはよくあることだ。

写真はバラナシ2日目の朝にガンガーの対岸までボートを漕いだ少年。岸に船をつけるのもヘタで、大人がやるのと違って水に足をつけなければならないところに船を停めるし、一人で漕ぐのでスピードも遅い。一応交渉して合意した価格に対して「ここは流れが速いから追加料金ね」とかしっかり仕掛けてくるが勿論無視する。が、逆にこちらから「お父さんには内緒だぞ」と小銭をあげて懐柔できるか試してみた(このボートの価格は親と交渉したもので、少年はボート漕ぎのみしている)。対岸から帰るとき不当な条件を急に言われても困る(対岸にいるという立場はあまりに弱い)ので、先手を打つ意図もあったのだが、特に帰りに余分な請求をされることはなかった。彼は本当に小銭を自分の懐に入れたのかそれも親にきっちり出したのか果たしてわからない。願わくば前者であってほしい。