光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

初日

MINOLTA CLE / Elmar 5cm F3.5 (FP4 PLUS)

インド旅行記(03)

送迎車の中で、ぼくは始めて飛び込んでくるインドの景色に「旅行者の目」全開でいちいち目移りしていた。信号待ちで物乞いの母子が窓をバンバン叩いてきたり、マリオカートばりの交通マナーにおびえたりしながら、気がつくと予約した宿に到着した。まだ夕暮れ前だったが宿にひきこもりたい気分でいっぱいで、早速出かけようなどという気持ちには到底なれなかった。 1日目の宿ははっきり言って結構高価い(約1800円)ところだったが、それなりにきれいでもあり、日本国内の旅行でもこれよりも汚いところなど結構あることを考えると充分であった。そういえば以前大阪で1800円の宿に泊まったことがあるので、物価を考えるとこのホテルはものすごく高級な気がしてきた。 とは言え初日のカルチャーショックをやわらげる意味ではこのくらいでも良いのかもしれないと数年前タイに行ったときのことを思い出しながら感じた。旅行スキルがさして高くないうちにろくな準備もせず行った結果、変なババアにボられ心が折られたので、精神力を消耗しないようにするのが得策だ(念のため付記するが、インドから帰った今思い返すと、タイは安全で飯が旨くて人が良くてとても良い国だ)。実際日本語を喋れる旅行代理店のインド人に欧米、日本人の宿泊客も多く、ワンクッションという意味では良い環境だった。 たまたまロビーには最近デリーに住み始めたというMさんという日本人女性がおり、対インド人の基本的な部分や観光ルートなどの相談に乗ってもらった。また、今回はSIMロックフリーiPhoneを持参したこともあり、現地のプリペイドSIMカードを購入して可能であればネット接続までしたいと考え(ソフトバンクの国際ローミングでは超高価いのでやらない)、その点も相談し近くのSIMショップまでつきあっていただいた。AirTelというキャリアのカードを購入し、500ルピーほどチャージした。電話はできるもネットはできず困ったが店のオヤジもわからなそうだったので後でネットカフェで調べようと思い一端引き下がった。この契約だけで1時間近くかかり、ぼくはそんなのにつきあってもらって申し訳ないと謝ったが、Mさん曰くこれがインド時間だから普通です、と言っていた。 後から思うに、インド式の接客はシリアルな処理ではなくパラレルな対応が普通のようだ。つまり一人ずつの話を聞くのではなく、同時並行で何人もの客をさばこうとする。どちらが良いかというのはケースバイケースだが、少なくとも見ている限りではPCで複数アプリを立ち上げたときと同様に結果として余計処理に時間がかかっている気が大いにしてならないのだが、まあそういうものなのだろう。

その後Mさんや旅行代理店Rさん、それと往復の飛行機とこの送迎プランがたまたま一緒だったSさん、仕事を兼ねて来ている定年間近のTさんと一緒に近くのレストランで食事をした。思えばここの料理はぼくのインド旅行で1、2を争う旨さだった。

部屋に帰ってからインド式トイレ作法の実践を試みた。すなわち、不浄の左手で水を尻にかけて洗うという日本人にとってはかなり抵抗のある手法で、いかに自分の肛門といえども排便直後のそれに触れるのはきついので水をパシャパシャとかけるようにしてみたが結局手に付き、名実ともに不浄となった。 後から旅で会った色々な人に聞いたが、流石にコレはやっていないと皆口をそろえて言っていた。大体そこそこの安ホテルでも紙も流れるので無理してやる意味がない。郷に入れば郷に従うがぼくのモットーだが、別にトイレは誰が見るわけでもないのでまったくその必要は無いのであったが、流石にバックパックにピーナッツバターや調理用ボウルまで突っ込んでいる欧米人バックパッカーの郷に従わないっぷりもどうかと思う。