光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

守宮

Leica MP / Summaron 35mm F2.8 (HP5 PLUS)

季節を実感する要素はいくつかあって、気温だったり食べ物だったり植物だったり、あるいはTUBEだとか山下達郎だとか、ネットに子どもが増えただのの風物詩のたぐいだったりというのもある。ぼくの場合特にピンポイントに重視しているものがあって、ひとつは秋の訪れを実感させる金木犀の匂い。もうひとつが、冬の終わりを告げるヤモリの出現だ。 今の部屋に引っ越した年の初夏の頃から、玄関前の電灯に寄ってきている虫目当てにスタンバイしているのを目にしていた。最初はびびったが、だんだん可愛く感じてきて、ゲートカ君(トカゲの業界読み)と心の中で命名し、あまり驚かせないように家への出入りを心がけた。仕事で終電近くになるともう先に寝ているということもわかり、彼の出勤時間はおよそ18時から22時くらいまでということもわかった。 引っ越してから1年になる前、涼しくなった頃にゲートカ君は姿を見せなくなった。爬虫類なので寒さには弱いのだろうと思い、冬眠したか死んだかというくらいに思った程度だったが、その後、暖かくなってきた頃に毎年姿を見せてくれるので、いつしか毎年の楽しみになり、ぼくにとっては季節を運ぶ存在となった。 先日は直接の親子かはわからないが、ゲートカジュニアを見ることができた。また、別の日には別の個体が同時に部屋の玄関のところにいて明らかに顔が違うことがわかったので、れいのヤモリは毎年個体が違うわけではなく、ここ数年来のゲートカ君に違いないと確信した。 涼しくなってくるとゲートカ君は姿を見せなくなり、夏の終わりを実感する。金木犀の香りがただよってくるまでの少し寂しい季節は、ぼくの中では夏でも秋でもない。