光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

流通

MINOLTA TC-1 / G-ROKKOR 28mm F3.5 (DELTA100)

カメラの話。

古いカメラやレンズばかり買っていると、そもそも売ったり買ったりを繰り返すことが多く、あまり所有という概念にとらわれることがなくなってくる。世の中に流通しているものを一時的に手元に留め置いておくためのデポジットのような感覚とでも言えようか。逆に、少し前は新品のデジカメなんかもよく買ったりしていたが、後継品が出たらすぐに処分しないとどんどん値段が下がってしまうので次々に買い換えなければいかず(おおざっぱに言えば基本的に現段階のデジカメにおいては「古くても後継に無い長所があって価値がある」ってことはひとつもないので)、そんな自転車操業に疲れたので、あっちの世界はしばらく横目で見させてもらうだけにした。

古いってほど古くもないが、持ち歩き用に持っていたミノルタのTC-1というコンパクトカメラを最近手放した。ここに掲載した写真はこれを含め数枚しかなく、なんというか、設計者やメーカーなんかの趣味やポリシーが見え隠れするようなとても良いカメラだと感じたのだが、自分との相性は悪かったようだ。ハマる人が使えば凄く良いものが撮れそうなのでとても残念だ。

その代わりに買ってきたのが、ライカ用のレンズ。今度の旅行用にと考えたのがエルマーの3.5cm F3.5だ。ぼくは普段から50mmのレンズを一番よく使うのだが、今回は35mmをメインに使ってみたいと考えた。理由はないが枷のようなものを設定するとおもしろいからだ。35mmはズマロンF2.8を持っているが、自分的には優等生なのでもっと老齢のいぶし銀が欲しくなった。で、たまたま見つけた一番安いエルマー3.5cmは後でシリアルから調べたら推定1935年製造の戦前モノであった。最早この世代の代物にまともな状態を期待するほうが誤りで、これは個性なのでレンズにキズがあってもいいのである(でもクモリは敬遠する)。欲しくもないが付いてきた箱には、裏に「1965-2-21 Leica II f」と鉛筆で書いてあった。このタイミングで手に入れた人が、備忘のためにライカIIfと一緒に買ってメモったのだろう。それから何人の手を渡ってきたかはわからないが、巡り巡って2010年3月、ぼくの手元にある。そのうち飽きたり、使いこなせなかったり、貧困にあえいだりして手放すときが来るかもしれないが、その日が来てもいいように、1965年に買ったセンパイにならって、この箱の目立たないところにちょっとだけ落書きをさせていただいた。