天唾 - 光景ワレズ

布の相場を教えてくれた日本料理屋では、敢えてカツカレーを食べた。たぶんどこぞのメーカー製レトルトカレーのような味だったが、これでも日本のカレーという感じがして、インドの味に飽きがきていたところに大変助かった。他の学生さんたちもかき揚げそばなどを注文し、実際とは大分違う代物ではあるがそれでも期待以上に雰囲気は出ていた。一緒に食事をしていたうちの一人が、(少し前に書いたが)列車で荷物を盗まれてしまったので予定を早めて帰国するという学生さんその人だったのだが、当然着替えも盗まれたため現地調達した結果、割合にベテランバックパッカーの装いに見えるようになっていた。黄土色のTシャツには梵字があしらってあった。これはどういう意味なのかと先ほどの店員に尋ねると、オームといって大変に神聖な意味を持つと答えた。そういえばどこかで見たことがあると思っていたがやっぱりあの辺の事件の話題で見かけていたやつだ。15年前だったらちょっと日本に着て帰ってこれなそうなTシャツだなあ、と思っていると、店員は、自分はその文字をここにあしらっている、と自慢げにうなじの部分にある同じ文字のタトゥーを見せつけた。そしてその後学生さんに向かって、いいかそのTシャツを着てトイレに行ってはいけない、トイレに行きたければシャツを脱ぐんだ、なぜなら神聖なものを汚すことになるからだ、と強い口調で言い始めた。学生さんたちの一斉の「じゃあお前はトイレどうするんだ」という明らかな誘い受けに対する反撃のツッコミを見ながら、先の布の実際相場も含め、この男の言うことは信頼できるなあと感じた。で、ピーノリ姉さんも含め、トイレどうすればいいんだろう。