光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

甲斐

Leica MP / Summar 5cm F2.0 (FP4 PLUS)

(前回のつづき) そもそも小学校低学年くらいの子どもと接する機会自体がほとんどないので、遊びの様子を見ながら会話を楽しんでいたところ、ふと、上も見てみなさいと大家さんから声がかかった。 屋上は家庭菜園になっていて、大家さんはその日の畑仕事を終えたところのようだった。足下には間引きされたひょろひょろの出来損ないのにんじんなどが転がっている。うさぎの餌などにするという。 おそらく雑誌などのプロのメディアから素人ブロガーまで、自分を含め様々に興味を持った人が訪れ、取材され、同じような話を聞かれているのだろうが、大家さんは特にいやな顔もせずいろいろと昔話や現状などを教えてくれた。聞けば、大家さんの子どもたちは皆実際に建築関係の資格を取ったり仕事をしたりし、また孫たち(さっきの子たちのことだろう)もまた将来は大工になりたいなどと言っているという。ここに住んでいたらそりゃあぼくだって建築士目指したかもしれないなあ、なんて思わされる。地上よりも安心して子どもたちに土いじりをさせられることが特徴だと大家さんは言った。確かに、6階相当の柵も無いところに立っていても不思議とちっとも怖くない。 屋上には、さらに上の階層を作ろうとした支柱だけが何本か立っている。大家さんの旦那さんは亡くなる少し前まで、まだ上を作ろうとしていたらしい。もう部屋を増やす気は無いと言うが、スクラップ&ビルドに真っ向から挑むこの生き物のようなマンションと、あのお孫さんたちがいれば、更に上に伸びたりとかも決して無い話じゃないな…、と個人的に勝手に思っている。 とにかくなんというか、大家さんの人柄とパワフルさ、そしてこのマンションの存在感に触れられただけでも四国に来た甲斐があったな、と思わされた。本当にありがとうございました。次は是非泊まりたいです。