光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

葬礼

MINOLTA CLE / Elmar 5cm F3.5 (FP4 PLUS)

インド旅行記(27)

バラナシには観光者に知られる火葬場が2つほどあって(もしかしたらもっとあるのかもしれないが)、ぼくも滞在中何度か足を運んだ。眺めていると「おれはあの人の関係者だ、ここは親族しか見ることができないんだ、だからあっちに行け、そしてあっちで見学料を払え」的な嘘を言ってくる奴が寄ってくるが、何度か通って嘘つくんじゃねえと追っ払っているうちに寄ってこなくなるので初心者の洗礼のようなものなのだろう。ただ写真撮影は本当にしてはいけない雰囲気なので、火葬場の写真は一枚もない。 よく旅行記などを見ると生死を考えさせられるとか生々しいとかいう感想も見られるが、ぼくの所感としては遺体は布に包まれているのでよくわからないし、燃え始めてもたまに脚っぽいなーとかわかるくらいでそこまでの生々しさは感じない。数時間して火がよく通って炭のようなものになると、野良犬が寄ってきてその「焼き肉」のおこぼれを食べにきたり、なぜか交尾を始めたりするあたりのほうがよほど「生」というものを感じるし、もっというとこの街の胡散臭さや面倒臭さ、いい加減さやおもしろさすべてを含めてそういうものを感じているので、特段に火葬については感動はなかった。 とはいえ、火葬前の儀式として、ガンガーの水に老婆の遺体を漬けて清めている家族がいて、その人たちが泣いているのを見たときは、やっぱりインド人も泣くんだ、と変な納得感と、無関係な旅人が抱ける程度の、一抹の哀悼の意を感じた。 さてこの対岸の不浄の地には、諸事情により火葬されずに流された遺体などが漂着して、そして野良犬の餌となるケースも少なくないらしい。ぼくの眼前にあるこの布きれも、もとは遺体を包むものだ。手前の骨はやっぱり、そうなんですかね。