光景ワレズ

KOUKEI-Warez photography

闘諍

MINOLTA CLE / Elmar 5cm F3.5 (FP4 PLUS)

インド旅行記(16)

バラナシの駅には予定より2~3時間遅れで着いた。正確にはもっと早く着いていたが、駅の直前あたり、目視できる距離くらいのところでなぜか停車していた。まあ最大半日くらい遅れることを覚悟していたので十分早いと思ってそのままとどまっていたが、上段と中段を交換して寝ていたその日本人の人は先を急ぎたいとのことで歩いて駅のほうまで行ってしまった。それから30分後くらいにゆっくりと列車は駅のホームに入線した。 例によって列車を降りたら知らないおっさんが専属ガイドばりにこっちだと誘導しようとしてくるのでこれを圧倒的に無視し、待合室脇にある外国人専用の案内所のようなところに逃げ込んだ。現地人は入れないらしいので、RPGで出てくる街と同じような安心感がある。ここでバラナシの地図をもらったりしていたところで列車に乗る前に知り合った学生さんと再会し、一緒に川沿いの安宿街までリクシャーを相乗りすることにした。 リクシャーなどはセリのように何人かを集めて競わせると安くなったりする。インド人同士で「おれが最初に声をかけたんだ」「いやしかしおれの勧誘に食いついてるじゃないか」などと小競り合いになることもあるがそれはそれだ。ところでリクシャーは運転手を含めて3人乗りなので、学生さん2人とぼくの計3人はどうしても分乗する必要がある。ここでリクシャー2台で30ルピーぽっきりという、あからさまなほどに相場よりも安いリクシャー2人組に決めることになった。ぼくは明らかにあやしいと思ったが、こっちも3人いるしまあいいか、ということ背の順で分乗することになり一番小さいぼくともう一人で乗り、背の高い学生さんは1人で乗ることになった。 ちょっと走るとすぐにもうひとつのリクシャーは見えなくなった。本当に現地で合流できるのかという不安が一気にでてきたので、ぼくはiPhoneのコンパスを起動してみた。するともらった地図と現在地の位置関係からして不自然な方向にリクシャーが向かっているのがわかった。ぼくは運転手に、お前はどこに向かっているんだ?と聞くと、運転手はリクシャーを停めた。 運転手はゆっくりこちらを振り返ると、お前らが今から向かおうとしているところはとても危険だ、だから俺が推薦するホテルに今から連れて行く、ここは大変キレイで安く安全なのでオススメであり……と要するにホテルと提携してマージンを取る類の奴であった。個人的にリクシャーに連れてこさせようとするホテルはボロかったり遠かったりであまり人気がないか、かつて『地球の歩き方』に出たことがあってもその後の怠慢で評判が落ちて歩き方から削除されたようなところが多い(と個人的には解釈している)ので、できたら避けるようにしている。説明を聞くと案の定宿を取ろうとしている地域から大分離れている。到底受け入れられないのでそこに行く気はない、約束通りの場所へ行け、イヤ無理だ、なにこのうそつきめ、うそつきとはなんだ、いやいいからとっとと行け!などと日本語英語を交えながら声を強くして押し問答をした後に、結局埒が明かないので金を払わずに降りた。そして近くにいた関係ない人にこの地点から街までのリクシャーの相場を聞き、そして別のサイクルリクシャーを拾って移動することにした。ようやくトラブルらしいトラブルにあったかな、という感じではあるが、まあかわいい範囲のものでよかった。ところでもう一人の学生さんとはこれっきり会わなかったが……まあ大丈夫だろうな。こういう割り切りが個人旅行では大事だ。

この写真の子供、サイクルリクシャーに乗っているところに自転車で併走しながら物乞いをしてきたツワモノである。そのため無駄に流し撮りが成立している。